事業内容

研究成果報告会

平成28年9月12日、贈呈式に先立ち第8回研究成果報告会が開催されました。今回は初めて2分野からの報告となり、まず、自然科学分野から東京大学大学院医学系研究科水島昇教授に「オートファジーと新規細胞内小器官分解機構」をテーマとした報告を、続いて 社会福祉分野から特定非営利活動法人Homedoor川口加奈理事長から「ホームレス状態を生み出さない日本へ」のテーマで報告が行われました。

水島先生 川口理事長
水島先生 川口理事長

報告会レポート

報告会では、茂木常務理事より水島教授、川口理事長が紹介された後、お二人から、約1時間半にわたり成果報告及び質疑応答が行われ、最後に社会福祉分野水田委員長の講評が行われました。

報告会風景 水田委員長講評
報告会風景 水田委員長講評

水島先生報告要旨

 オートファジーは真核細胞に普遍的な細胞内分解システムである。オートファジーでは、細胞質の一部がオートファゴソームに取り囲まれた後にリソソームへと輸送されて分解される(図参照)。生じた分解産物は再び細胞質に戻されリサイクルされる。大隅良典博士の酵母を用いた遺伝学的研究をブレークスルーとして、オートファジーの分子機構と生理的機能の研究はこの10数年間に大きく進展した。オートファジーの役割は二つに大別することができる。一つは、アミノ酸などの分解産物を調達するための栄養素のリサイクルで、この機能は飢餓時のアミノ酸プールの維持、初期胚発生、内因性抗原提示などにおいて重要である。二つ目の機能は細胞内の品質管理や浄化を目的としたもので、変性タンパク質や不良オルガネラの除去、細胞内侵入病原菌の除去などを行うものである。後者の機能は寿命の長い細胞で特に重要であり、神経細胞変性抑止や腫瘍抑制のような長期的作用をもつことが明らかになっている。さらに家族性パーキンソン病などの神経変性疾患においてオートファジー関連因子の変異が発見され、ヒト疾患との関係も注目されている。
 一方で、典型的なオートファジーに依存しない細胞内分解系が存在することも明らかになってきている。その代表は水晶体細胞内での大規模なオルガネラ分解である。複数の独立したATG遺伝子を水晶特異的にノックアウトしても水晶体細胞内のオルガネラ分解は正常におこるため、新しいメカニズムに基づく、新規オートファジーの存在が示唆された。そこで私たちは、本助成金で購入した高感度検出装置を用いてマウス水晶体内でのオルガネラの分解過程のライブイメージングを試み、それに成功した。さらに、ゼブラフィッシュを用いた遺伝学的手法によって水晶体オルガネラ分解に関わる因子を解析した。これらの結果から、水晶体でのオルガネラ分解はリソソームを用いた新しいタイプのオートファジーによることが示唆された。

オートファジーの仕組み

川口理事長報告要旨

ホームレスの人の特技を活かす「シェアサイクル事業」
 Homedoorのメインの取り組みである「HUBchai」(ハブチャリ) は大阪市内に展開する複数の拠点(1日利用は8拠点、月額利用は18拠点)で、1時間200円から自転車をレンタルできるサービス。どの拠点で借りてもどこで返してもいい、レンタサイクルの進化版だ。このHUBchariの運営を担うのがホームレスや生活保護受給者たちで、のべ170名が就労した。
シェアサイクル「HUBchai」(ハブチャリ)  空き缶回収などで自転車に何キロもの荷物を積んで走るホームレスの人たちにとって、自転車修理はほぼ共通した特技。その特技を活かして、貸自転車の修理や整備、一部拠点での貸出業務などを担ってもらっている。HUBchariはホームレスの就労支援と同時に、放置自転車を緩和するシェアサイクルを広め、大阪で特に深刻なこの二つの問題を解決する取組みだ。利用者が便利さを求めて自転車を借りると、それがホームレス支援につながる。ホームレスの人たちにとっても自分たちの仕事が自転車問題の解決に役立つことで、やりがいを持って働くことができる。
きっかけは、路上死、そして中高生の野宿者襲撃
 Homedoorの設立は、2010年4月。「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」ことが目的だったが、設立には代表である私の体験が大きかった。私は、「豊かな日本で、なぜホームレスになる人がいるのか」との疑問から、14歳の時に釜ヶ崎の炊き出しに参加した。そこで日本の路上で凍死や餓死する人がいることを知るが、ホームレス問題を学ぶ中で何より驚いたのは自分と同世代の中高生が野宿者を襲撃する事件を起こしていることだった。「ホームレスは社会のごみ。俺たちはごみ掃除をしてあげている……」。そんな言葉にショックを受け、ホームレスと少年たちの最悪の出会いを食い止めたいと、学校での講演活動などを通じてホームレス問題に関わり始めたが、状況は変わらなかった。そうした中で、啓発活動や炊き出しなどの対症療法的な活動だけではなく、問題の根本的な解決のためには、ホームレス状態を生み出さない社会こそが求められているとの思いに至り、19歳の時にHomedoorを立ち上げた。
 現在は、路上からの「出口づくり」、ホームレスにそもそもならずに済む「入口封じ」「啓発活動」の3つを柱に9つの事業を展開している。

このページのTOPへ